「寝たきり老人」をなくすには

 日本の寝たきり高齢者数は、1993年90万人が、2000年には120万人、2025年には230万人に急増すると推計されている。(『厚生白書』平成8年版)。長期ケア施設入所者(65歳以上)のうち寝たきり状態の割合は、スウェーデンでは4.2%であるが、日本では33,8%。なんと、日本はスウェーデンの8倍も多い(『国民生活白書』平成6年度版)。その違いは、どこにあるのだろうか。
 日本では、寝ることが疾病対策の第一歩と考えられ、「生活の場」がベッドになっていることが多い。ところが欧米では“Bed is bad”(高齢者がベッドに寝ているのは良くない)の思想が普及している。スウェーデンのサービス・介護つき住宅でも、昼間からベッドに寝ている高齢者はほとんど見られない。高齢者たちは、個室に居ることさえ少なく、リビングやホビー室で過ごすことが多い。
 スウェーデンは日本に比べて、大腿骨頚部骨折の発生頻度が2倍も多いが、寝たきり老人は少ない。頚部骨折一人当たりの「寝たきり頻度」は20倍の差がある。(高杉紳一郎、1997、1069〜1071頁)。日本では「高齢者の骨折は寝たきりにつながる」と一般的に考えられているが、スウェーデンでは、たとえ骨折していても、それが寝たきりに直結しないのである。
 魅力的な日常生活を送ることが、寝たきりの防止につながる。疾病重視から福祉・介護の充実への政策転換が、「寝たきり撲滅」への早道であり、長期的にみれば最も経済的で人間性にかなったものである。


■関連項目 福祉国家への建設



親族または身近な人からの介護と介護手当

1996年12月の統計によると、介護職員またはオブジェクト(objektanstalld=特定の人の介護だけ)雇用という名前で、市当局から雇用されている親族または身近な人からサービス・援助を受けている者は、約2%に相当する約3,500人である。また親族介護手当て(Anhoringbidrag)あるいは同様の名目で経済的援助を、市当局より得ているのは約3%である。残りの約95%は、親族または身近な人以外から介護を受けている。

■関連項目  経済保障



80歳以上の高齢者人口が増加

 
80歳以上の高齢者人口が1997年は1960年の3倍に増加。
 スウェーデンの新聞は「高齢者ブーム。だから危機」と題し、最も介護を必要とする80歳以上の高齢者人口の急増と16歳から24歳人口(ホームヘルプサービスなどで働く介護者)の減少を伝えている。
(Svenska Dag新聞 1998年3月22日)


■関連項目  グループホーム