◆解説11:男性の危機センター

 女性の危機センターは1983年に開設され、そこに、夫に暴力を振るわれた多くの妻がかけ込んで来た。夫は妻がそのセンターにいるだろうと思って電話してくる。その夫の話から、男性がどうしたらいいのかわからないで困っていることや男性の方に多くの問題があることが明らかになる。一方、政府の方からも、男性の役割を、社会人や労働者として、さらに家庭の夫や父として、見直そうという動きが出てくる。男性のための危機センターの第1号は、1986年にヨーテボリで開設された。その後、各地に男性のための危機センターができる。
 相談の受付は電話で行なう。来所してもらう日と時間を決める。個人とグループのカウンセリングがある。当面の暴力だけでなく、恋人関係、家族関係、人間関係における男性の状況について話し合う。
 主要テーマは、@家庭内暴力、A離婚・同棲の解消前後に陥る男性の精神的危機への対応、B離婚・同棲の解消後の子どもとの関係。
 女性の危機センターとは密接な連携を保つ。お互いの経験を交換しあい、男女平等の考えを徹底させ、暴力を振るわない社会を作るために、教育キャンペーンを一緒に行なっている。


■関連項目 パートナー関係の変化と男性問題

◆解説12:婚外子の地位

 スウェーデンでは、1970年家族法改正で婚外子は婚内子と同等の相続権をもち、父親の姓を継ぐことも可能となった。さらに1976年の親子法改正では、「非嫡出子(illegitimt barn)」の用語そのものが差別を生むとして法律上から削除された。婚外子に対する法的・社会的差別はなく、父母の婚姻関係の有無が子どもの法的・社会的地位に影響を及ぼさない。
 婚外子のうち、95%は同棲カップルから生まれており、わずか5%のみがシングルマザーからである。
 一方、日本では、婚外子差別は法律婚家族の保護を理由に正当化され、婚外子は法的にも社会的にも差別されている。以下は、法的・制度的差別の例である。

1.相続−民法900条第4項では「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1」と規定。

2.法的書類における記載−出生届の「父母との続き柄」の欄に嫡出・非嫡出の区別記入が義務とされている。戸籍の父母との続柄表記は嫡出子の場合は「長男・長女・二男・二女」で、非嫡出子の場合は「女・男」。

3.税金・社会保障制度−離婚・死別に適用されている【寡婦控除】が非婚の母には認められない。事実上の父(生物学的父)が子を扶養していても、認知がないと【扶養控除】が認められない。【児童扶養手当】は、非婚母子家庭の場合、父が認知すると停止となっていた。1998年5月3日の朝日新聞によると、厚生省は、これまでの方針を転換し、「認知後でも支給する」ことを決め、政令を改正し、1998年8月から施行したいとしている。

4.国籍−外国籍の母と日本人父の間に生まれた子の場合、国籍は外国籍とされる。父が胎児認知した場合だけ子の国籍は日本となる。

■関連項目 性に対する規範


◆解説13:養育費を強制的に取り立てる制度

 子どもを引き取っていない親は、子どもと暮らしている親=同居親に、子どもが原則的には18歳になるまで養育費支払いの義務がある(未婚で高校に在学の場合、最長20歳になる年の6月まで延長)。以下のような場合には、社会保険事務所から養育費手当が同居親に支給される。
@養育費支払い義務のある親が養育費を支払わない場合
A支払われる養育費の額が、最低養育費額(1998年は月額1,173kr、19,941円)に達していない場合
B父親が不明あるいは父親が確定していない場合
C片親が死亡し、社会保険法による児童年金のない子どもの場合
 養育支払い義務者が、支払い能力があるにもかかわらず養育費未払いの場合、社会保険事務所は、同居親の申請に基づき、養育費の最低保障金額を同居親に即刻支給。年収から生活に必要な金額(免除金額)を残し、支払うべき子ども一人あたりの毎月の養育費を計算し、支払い義務者に返済請求する。社会保険事務所の返還請求に応じない場合、 国税庁に連絡し、返還の<強制執行>を委託。<強制執行>には、@賃金からの差し引き、A動産・不動産の差押えがある。
 養育費の支払い不足分は負債として蓄積され、その後に支払可能になった時に遡って請求される。遡及年数は、1994年までは3年、1995年からは5年。
 社会保障費の負担軽減のために、1997年2月から返済義務者の免除金額が引き下げられ、名称も養育費立替(bidragsf嗷skott)制度から養育費手当(underh畦lsst單)制度に変更される。1998年現在の免除金額は24,000kr。
つまり、年収24,000kr以下の場合には、返済義務がない。
 なお、養育費支払い義務のある親が、子どもと5日間以上継続して同居した場合には、一方の親へ仕送る養育費や社会保険事務所への返済金から一定額を控除できる(1昼夜につき、毎月の養育費・返済金の40分の1を面会控除として差し引く)。
 1997年、約33万人の子どもが養育費手当を受け、このうちの30万人は全額、残りは差額の支給。返済義務のある親は20.8万人、そのうち87%が男性。養育費支払い義務者のうち、4分の1に相当する53万人は、無収入か低所得のために返済不要。養育費の強制執行の件数は、前年度の2.3万件から4.35万件に増加。約2.2万人は、返済金額の返済延期の許可を得ている(Dagens Nyheter 新聞 1998年3月1日)。


■関連項目 父親の養育責任