◆解説14:親子同居の規範と意識 
 
 スウェーデンでは、「子どもは親と同居して介護を行なうべきだ」という社会的規範はもはや存在しない。配偶者を亡くした場合でも、子どもとの同居を望まない。
 日本女子社会教育会の1994年に実施した『家庭教育に関する国際比較調査』(日本・スウェーデンを含む6カ国の0歳から12歳の子どもをもつ親1,000人に対する訪問面接調査)によると、「将来子どもにして欲しくない生活」の質問(複数回答)で、「自分との同居」や「配偶者の親との同居」を挙げる人は、スウェーデンでは多く、日本では少ない。ちなみに、「同棲」や「未婚で子どもを持つ」は、スウェーデンで少なく、日本で多い。

図6  「子どもにして欲しくない生活」−スウェーデンと日本の比較
資料:日本女子社会教育会,1995『家庭教育に関する国際比較調査報告書』


■関連項目 老親との関係

◆解説15:老親と子どもの交流

 スウェーデンでは、子どもが成人すると親の家を出ていくのが一般的である。親が高齢になったからといって、子どもと同居することはほとんどない。『生活状況調査』(ULF)によると、65歳から84歳の高齢者の家族形態は、「夫婦のみ」か「一人暮らし」が大半を占め(図8)、一人暮らしの高齢者(とりわけ女性)は増加し続けている。これは、平均寿命が延び、配偶者に先立たれる可能性が高くなっているためである。
 子どもが年をとっても“生きている親”が増加し、現在では55歳のうち半数近くの人に老親がいる。高齢者の親をもつ子どものうち7割は、親が50km圏以内に住んでいる。子どもは老親(母親である場合が多い)に頻繁に会っている(図9)。

図8 高齢者の同居割合   図9 高齢者とそのと子どもの接触頻度

出典:SCB, 1994, Fakta om den svenska familjen

■関連項目 老親との関係


解説16:インフォーマル・ケア
 
 公的援助機関への申請および調整や情緒的ケアはインフォーマル・ケアによってなされている。スウェーデンでは、配偶者・子ども・友人などが行なうケアに対して、在宅介護手当が支払われ、介護時間が多い場合には公的雇用と同等に扱われている。こうした社会的に保障された(半ば公的な)インフォーマル・ケアがある。
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