◆解説8:人工授精と代理母

 スウェーデンでは、法律婚や同棲のカップルには、@夫の精子による体内授精AIH(Artificial Insemination by Husband)、A夫以外の男性の精子による体内授精AID(Aritificial Insemination by Donor)、B身体から取り出した卵子を体外で夫やサンボからの精子を受精させ、再び女性の身体にもどす体外受精IVF(In-Vitro Fertilisation)の3つの方法が法的に認められている。夫以外の精子が提供されるケースは、人工授精全体の1%にもみたず、ほとんどが夫の精子のケース。
 人工授精を受ける人が近年増加。その背景には、@多くの病院で受けることができるようになる、A体内受精は手術を必要とせず、成功率が高くなる、B養子の対象になる子どもの数が少ない、C結婚家庭に子どもがいるのが普通という考え方がスウェーデンでも根強く、いろいろな方法で子どもを作ろうとする人が増えたことなど。
 夫以外の男性の精子が提供された場合、子どもの父は法的には妻の夫やサンボ相手で、その男性の子として相続権もある。精子の提供者は、その子どもに対して責任は一切ない。しかし、子どもには自分の親を知る権利があると考えられ、AIDで生まれた子どもは、生殖的父を知りたくなれば、18歳になると精子提供者についての情報を得ることができる。
 スウェーデンでは、精子の商業的売買や代理母は法律で禁止。代理母に対して、@体内で胎児を育てる間に女性は子に愛情を抱き、出産後、子から切り離された女性の精神的痛手を考えると、マイナス面が大きい、A妊娠・出産の代償にお金を払うという商業主義的考え方は許されない、といった意見が一般的に支持されている。

■関連項目 法律婚とパートナーシップ

◆解説9:寡婦年金廃止とかけ込み結婚

 スウェーデンの<男女平等>や<個人の経済的自立>の思想は社会保障システムへも影響を及ぼす。夫への収入依存を前提として設けられていた“未亡人”のための寡婦年金は1990年1月に廃止され、“残された配偶者”のための一時的年金という、“ジェンダー中立的”なものに改革された。
 改革の移行措置として、1944年以前に生まれた1989年までに結婚していた女性は、これまでの寡婦年金を受ける権利が無条件に保障される。そのために、1989年の婚姻数は記録的に増加し、婚姻率も上昇する。
図2 婚姻率の推移


資料:国際連合『世界人口年鑑』1982.1990.1995

■関連項目 パートナー関係の変化と男性問題


◆解説10:両親保険制度

 出産によって、両親は総計で最高450日まで手当を受けることが可能(子どもが8歳になるまでに利用)。1995年から「パパの月」「ママの月」制度を導入。父親の休業日数は母親に譲り渡すことはできない。360日分の両親保険手当金額は、賃金の80%(1998年1月より)。その残りの60日は1日につき60kr(1,020円)を支給。
 父親の育児休業制度が導入されているが、育児休業取得の父親の割合は、なかなか増えず、1996年にようやく3割を越えたにすぎない。休業取得日数の父母割合をみると、圧倒的に母親の日数が多く、父親は1割程度(1996年10.6%、1997年9.9%)である。


■関連項目 パートナー関係の変化と男性問題