◆解説1:同棲の増加

 スウェーデンでも同棲は、1950年代には逸脱行動と考えられ、共同生活を営む男女の中で同棲カップルの割合は多くても1%ほどであったが、1960年代から急速に増加し、国勢調査では1975年には13%、1980年18%、1985年および1990年は23%。若いカップルに特に同棲が多い。


■関連項目 ライフスタイルの多様な選択

◆解説2:ホモセクシュアル同棲法の制定の歩み

 1945年に18歳以上のホモセクシュアル関係は犯罪でなくなる。1970年代初め頃からホモセクシュアルに対する差別反対運動がスウェーデンでも盛んに行なわれ、1970年代後半には「ホモセクシュアルは病気である」という考え方が否定され、1979年に社会省の病気の登録リストからホモセクシュアルが抹消された。
 政府は、1978年に調査委員会を発足させ、ホモセクシュアルについて大規模なアンケート調査を実施。回答者1,259人のうち、約半数が同性の人と同居。
 この調査により、1.同性愛者と異性愛者の間に、カップル関係の感情に差異はない、2.同性愛者がパートナーと安定した共同生活を維持するために社会的支援が必要、3.弱い立場のパートナーへは法的保護が必要、ということが明らかになる。
 1984年にその調査の報告書(SOU 1984:63)が作成され、ホモセクシュアルカップルへの法的対応について、1.異性間の同棲法を適応させる、2.異性間のカップルと同じく結婚とする、3.登録することで、異性間の結婚と同等な権利を与える、という3通りの方法が提案された。1987年に、国会でこの提案事項が議論され、3の提案が採択され、ホモセクシュアル同棲法が制定。
 ホモセクシュアル同棲法の対象になるサムボ関係の条件は、1.一定の期間、同じ屋根の下で共同生活している、2.パートナーが同性同士、3.パートナーの双方が婚姻中でない、4.パートナーの双方が15歳以上。これらの条件のうち、異性間のサムボとの違いは1の“同性”となっている点である。


■関連項目 カップルの3形態

◆解説3:RFSLの活動
             
 RFSL(性の平等のための全国同盟 )は、1948年にデンマークとノルウェーで結成される。スウェーデンでは1950年にストックホルムで結成。1970〜72年に各地に支部が作られた。主な日常活動は、@ホモセクシュアルの正しい知識の啓蒙活動、Aホモセクシュアルの人に対する相談・カウンセリング。ヨーテボリ支部では、週2回ゲイ・ラジオの放送を流し、出会いの場の提供として毎週ディスコを主催。


■関連項目 カップルの3形態


◆解説4:同棲法

 1987年に制定された同棲法の正式名は『サムボの共同住居に関する法律』[Lag(1987:232) om sambors gemensamma hem]で、通称「サムボ法(Sambolagen)と呼ばれる。共同住居(gemensamma hem)の“gemensam”は
「共同の」「公共の」という形容詞で、“hem”は「家庭」「住居」を意味する。
 この法律は、異性間の同棲カップルの財産関係、特に同棲解消時の財産関係の清算とその方法を定めたもので、サムボ関係の解消によって経済的に不利益を被る経済的弱者の救済がねらい。制定の背景には、1960年代後半から同棲の激増にともなって、同棲解消時に財産分割に関するトラブルが多く発生したことがある。家族法改正問題審議会では、<婚姻の中立性>の意味が検討され、「婚姻の実態が存在する限り、それが法律婚であろうとサムボであろうと、婚姻法の規定が適用される」という基本的考え方が出される。
 このサムボ法の対象になるのは、一定の期間、同じ屋根の下で生活している非法律婚の男女であり、重婚的同棲関係や短期的同棲関係には適用されない。
 サムボ関係の解消時にサムボ当事者の一方から財産分割の請求が行なわれた場合に、共同利用の目的で取得した住宅(土地・家屋)や家財道具は、婚姻に適用されているルールが適用され、当事者間で平等に分割。しかし、婚姻の場合と異なり、余暇利用を目的として取得された財産や預金・生命保険・株などの財産は分割の対象外。


■関連項目 カップルの3形態