◆解説3:老齢人口比率(高齢化率)の動向
 
 長寿で知られるスウェーデンの平均寿命は、女性81.6歳、男性76.7歳(1997年)。日本は、スウェーデンを抜いて女性83.59歳、男性77.01歳(1996年)で、世界最長寿国となっている。
 スウェーデンの高齢者人口(65歳以上)は154万人であり、総人口885万人に占める割合(老齢人口比率)は17.4%(1997年12月)。老齢人口比率は2035年から2040年には、22.4%とピークを迎えると予測されている。
 一方日本では、高齢者人口1,973万人、総人口1億2,610万人に占める老齢人口比率は15.6%(1997年10月)。老齢人口比率は、現在のところ、スウェーデンの方が日本よりも高い。しかし日本の老齢人口比率は2015年には25.2%に達し、4人に1人が65歳以上になると見込まれ、2021年にピークを迎えると予測されている。なかでも高齢者の3分の1を占めている後期高齢者(75歳以上)は、2022年には前期高齢者(65〜74歳)を上回ると言われている。
 高齢化の速度を老齢人口比率7%から14%になるまでの倍化年数で比較すると、スウェーデンでは82年を要したが、日本はわずか24年(1994年)というハイスピードで到達している。なお、老齢人口比率が7%から14%の社会は「高齢化社会」、14%以上は「高齢社会」、さらに老齢人口比率21%以上は「超高齢社会」と呼ばれ、日本は2005年に世界最高水準の「超高齢社会」になると予測されている。
 スウェーデンでは、老齢人口比率が10%を超えた1950年に高齢者福祉のあり方について真剣に議論され、現在も80歳以上の高齢者人口の急激な増加に対してどう乗り切るか、新たな福祉対策が模索されている。
 日本では、福祉対策の遅れが指摘されて久しい。ハイスピードで超高齢社会を迎える日本。スウェーデン以上に早急な対策が必要である。

  
図2 スウェーデンと日本の高齢化率の推移と予測

■関連項目 ケアつき施設の歩み

◆解説4:ノーマライゼーションとフールールンド地区

 フールールンド地区(Furulund)は、「皆が一緒に生活できる社会」というノーマライゼーションの発想で、1987年に完成した新興住宅地である。周辺には森があり、近くには水泳のできる湖もある。この住宅地には、小学校を中心に、図書館、大きな厨房のあるレストラン、高齢者用住宅(サービスハウス、ナーシングホーム、グループホーム)、地区診療所、デイケアセンター(主にリハビリを行なう)、理学療法室・作業療法室、訪問看護婦詰め所、ヘルパー詰め所、緊急アラームセンター、温水プール(治療目的)などがある。それらの施設は長い廊下で全てつながり、雪や雨でも外に出ることなく行き来ができる。周りには、一般賃貸住宅、分譲マンション、保育所、スーパーなどがある。なお、高齢者向けの配食サービスは、レストランの厨房から届けられている。


■関連項目 ケアつき施設の歩み