「ボージョレーヌーボーのちょっとしたお話」

1、ボジョレーヌーボーって、なに?

ヌーボーはその年に収獲した葡萄で作った「新酒」のこと、つまり、ボージョレー地方で作られた「新酒」が「ボージョレーヌーボー」という訳です。ボージョレー以外にも様々なヌーボーがありますが、やはり一番有名なのはボージョレーヌーボーです。なお、ボージョレーヌーボーの解禁日は、毎年11月第3木曜日と決められています。

2、ボージョレーとボージョレーヌーボーとはどう違うの?

ボージョレーヌーボーはマセラシオン・カルボニック※(炭酸ガス浸漬法)という特殊な醸造法で作られていて、作りたてのフレッシュでみずみずしい風味を楽しめます。一方、一般のボージョレーは、伝統的な醸造法で作られ、風味がよりしっかりしている為、半年ほど熟成させてから、翌年の春に出荷されます。ヌーボーが、解禁から数ヶ月間が一番おいしいのに対して、一般のボージョレーは数年間に渡っておいしく楽しめるのも、大きな違いの一つです。

※マセラシオン・カルボニク

炭酸ガス浸漬法。房を丸ごと醗酵槽に入れ、数日間炭酸ガスの中に漬けておく方法です。その間に、葡萄の粒の中でわずかな醗酵が起こり、酸味が柔らかくなり、ドロップを思わせるような甘くフルーテイな香りが生まれ、皮からの色も溶け出しやすくなります。この状態の房を絞って赤く色づいた果汁をとり、後は白ワインと同じように醗酵させる為、種からの渋味のない、フレッシュでフルーテイなワインに仕上がります。

3、ボージョレーヌーボーっていつからあるの?

ボージョレーに限らず、中世以来ヨーロパ中のワイン飲み達は新酒の季節を首を長くして待ち焦がれて来ました。ガラス瓶とコルク栓がなかった時代には樽から出したワインは新酒の時期が一番おいしく、一年後には酸化した酸っぱいお酒に変わってしまったからです。ボージョレー地方のワイン作りはローマ時代まで遡りますから、ボージョレーヌーボーは(そう言う名前こそ付いていませんでしたが)ローマ時代からあったと言って良いでしょう。

18世紀になると、ボルドーやブルゴーニュの超高級ワインで、瓶による熟成と言う新しい楽しみ方が誕生しますが、それは、あくまでごくごく一部の話。ボージョレー地方では相変わらず新酒の季節になると、地元の人たちがボンボンと言う名前のガラスの大瓶を下げて醸造所に集まり、一年分のワインを買っていくと言う風景が続いていました。ボージョレーの新酒のおいしさが、パリやロンドンで注目を集めるのは、実は、第二次世界大戦以後のことです。

4、ボージョレーヌーボーの解禁日って誰が決めたの?

1967年にフランス政府によって11月15日と決められました。ところが、毎年15日に決めておくと、年によっては、土曜日や日曜日に重なってしまう事があります。そうなると、せっかく新酒を出しても、お休みの日に働きたがらないお国柄のフランスでは、運送業者が働いてくれず、解禁日にワインが届いていないと言う事が起こってしまったのです。これでは困ると言う事で、1985年に「第三木曜日」に変更されたのだと言う事です。

5、飲む時に気をつけなければならない事は?

軽く冷やしてから飲んで下さい。普通のワインは種からの渋味がある為、冷やすと渋味が強調されて飲みにくくなりますが、ボージョレーヌーボーは、渋味が出ない特別な醸造方法で作られていますから、軽く冷やした方がおいしく楽しめます。又、ヌーボーは出来たてのフレッシュさを楽しむワインなので、長くねかせてもおいしくなる事はありません。遅くとも、春までにお飲み下さい。

6、どんな料理とよく合いますか?

ボージョレーは赤ワインには珍しく渋味も少なく、フルーテイでしかも爽やかな酸味にも恵まれている為、どんな料理にもよく合います。よく「肉に赤、魚に白」と言われますが、ボージョレならば魚料理にも大丈夫。フレンチ、イタリアンはもちろん、中華、和食などと、幅広く楽しめます。

7、ボージョレー以外にもヌーボーはあるの?

ヌーボーは「新酒」と言う意味ですから、フランスの沢山の地方で作られています。イタリアでは「ノヴェッロ」と呼ばれ、やはり色々な地方で作られています。オーストリアでは、ウイーン郊外にある「ホリイゲ」と言う居酒屋で出される新酒「ホイリガー」が有名です。もちろん、日本のヌーボーもあります。日本固有の「甲州種」から作られる白や、「マスカット・ベーリーA種」からの赤等が人気を博しています。

おしまい。